国際熱核融合実験炉研究開発の仕分け断念2009年11月21日 09時32分08秒

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行政刷新会議の事業仕分けで11月17日のスケジュールに挙げられていた,国際熱核融合実験炉研究開発(ITERITERの日本語解説)に関する仕分けを断念するというニュースが流れています.長期的な視点で見ると日本のエネルギー政策に大きく関わるので,安易に取捨選択をしてはならないと判断したようです.
この実験炉ではウランやプルトニウムの核分裂反応ではなく,水素(正確には重水素)の核融合反応を起こします.反応後に出来る元素はヘリウムで,放射性元素ではありません.少なくとも燃えかすが放射性元素ではない事,燃料は海水から分離するなどしてほぼ無尽蔵にある事から,究極の夢のエネルギー源であると言えるでしょう.未来を舞台にしたSF小説や漫画でしばしば登場します.残念ながら人類が核融合を利用した事は,水素爆弾しかありません.しかも反応を起こすために原子爆弾を用いています.
平和利用の核融合が何故難しいかといいますと,高温,高密度の状態を持続しなければならないからです.太陽の中心部で核融合反応が起きていますが,これは太陽自身の重力により押し縮められ,1500万度,数千億気圧の状況になるからです.地球上ではこの超高温状態の水素(プラズマ)を容器に閉じ込めなければなりません.しかも核融合を起こすとなると,数億度の高温が必要です.
核融合の技術では,日本は世界の第一線を走っています.日本原子力研究開発機構那珂核融合研究所にあるJT-60では,温度,密度,持続時間の世界記録を達成しています.エネルギー変換効率(出力/入力)は1を超えています.エネルギー変換効率が10程度になり,持続時間を1時間以上に出来るようになれば,実用的なものとなるでしょう.

国立大学運営費交付金はどれくらい重要か?2009年11月21日 09時56分50秒

今週の仕分けでは,文部科学省の義務教育費国庫負担金(約1兆6千億円)や国立大学運営費交付金(約1兆2千億円)が対象となります.前者の削減は論外だとすぐにわかるでしょう.後者はどれくらい影響があるか,考えてみます.
平成20年度の国立大学の入学者数を基にします.ここから大学生は4年間,大学院の修士,専門職は2年間,博士は3年間在学すると考えると,国立大学,大学院の学生数は約50万人です.
国立大学運営費交付金がなくなって,学生からその分を授業料で集めようとすると,
1兆2千億円/50万人=240万円/人

となり,学生1人から年間240万円を余計に集めなければならなくなります.
これでは鳩山首相の様な極めて裕福な家庭でないと,大学に進学する事は無理となるでしょう.
外国の大学は学費が非常に高いです.例えばプリンストン大学は授業料が年間3万5千ドル,寮費,書籍代などを含めると年間5万ドルを超えます.ハーバード大学も同程度です.しかし,アメリカでは給付される<奨学金が充実しており,学業に励む学生は学費だけでなく生活費まで保証されるようになっています.
日本は日本学生支援機構が『奨学金』と称して給付をしておりますが,実際は卒業後に返還しなければならないので,厳密には奨学金ではありません.(海外でこの制度を話したら,「それは学生ローンだよ」と言われました.)
国立大学運営費交付金は,日本の高等教育の柱です.ただでさえ独立行政法人化で地方大学や単科大学は運営が厳しくなっています.縮減は大学の閉鎖,合併なども引き起こしかねないと思います.

11月24日の仕分け2009年11月21日 09時57分18秒

11月24日の仕分けスケジュールが公開されています.
影響が大きそうなのは,外務省の無償資金協力援助でしょう.予算は約1600億円との事.結論次第では,国際社会で日本の立場が危うくなるものです.防衛省はまだ「自衛隊の広報・募集事業」「国際平和協力センター」です.日程は未定ですが「思いやり予算」をどうするのかが注目です.ただでさえ日米安保の話が政権交代の後でギクシャクしつつあります.この扱いを誤ると,日米関係が非常に危うくなると考えられます.