奇才 Wolfram2008年12月30日 11時37分06秒

UK-JAPAN2008のクリスマス企画で書いているイギリスの物理学者の話です.今日はスティーブン・ウルフラム(Stephen Wolfram,1959年〜)です.Mathematicaの開発者として有名ですが,実は物理学者としても名を馳せています.
父の Hugo は小説家,母の Sybil はオックスフォード大学の哲学の教授でした.幼い頃から才能を発揮したスティーブンは,わずか16歳で学術論文を執筆します.そしてオックスフォード大学で物理学を専攻し,17歳で卒業.その後,カリフォルニア工科大学(カルテク)に進み,20歳で博士の学位を取得します.近年まれに見るペースでの学位取得です.
ここまでで,既に異才を放っていました.物理学者ならば,如何に活発な研究者であるかが分かるかと思います.
  • Hadronic Electrons?
    Austral.J.Phys. 28, 479-487, (1975)
    最初の(出版された)学術論文
  • QCD Estimates for Heavy Particle Production
    Phys.Rev.D 18, 162, (1978)
    如何にして重いクォークを含む粒子が出来るかを,量子色力学を用いて考えた.
  • Observables for the Analysis of Event Shapes in e+ e- Annihilation and Other Processes
    Phys.Rev.Lett. 41, 1581, (1978)
    電子−陽電子対の消滅において起こりうる事象の研究.一番引用されている論文.
    この論文の抜粋は
    Event Shapes in e+ e- Annihilation
    Nucl.Phys.B 149, 413, (1979), Erratum-ibid.B 157, 543, (1979)
  • Abundances of Stable Particles Produced in the Early Universe
    Phys.Lett.B 82, 65, (1979).
    宇宙初期における粒子生成に関する研究.
  • Bounds on Particle Masses in the Weinberg-Salam Model
    Phys.Lett.B 82, 242-246, (1979), Erratum-ibid.83B: 421, (1979)
    電弱統一理論を用いて粒子質量の制限を与えた.
  • A Model for Parton Showers in QCD
    Nucl.Phys B 168, 285, (1980)
    量子色力学を用いたクォーク,グルーオンのシャワーのモデル
  • The Development Of Baryon Asymmetry In The Early Universe
    Phys.Lett.B 91, 217, (1980)
    宇宙初期におけるバリオンの非対称性.
  • Baryon Number Generation in the Early Universe
    Nucl.Phys. B 172, 224, (1980), Erratum-ibid.B 195, 542, (1982)
    宇宙初期におけるバリオン数生成.
ここまでが博士取得までの業績です.日本でこれくらいの業績を挙げれば,今では非常に就職が厳しいですが,助教以上にはすぐに着任できるのではと思います.素粒子論,宇宙論における多大な業績を,わずか21歳までで挙げているのです.
このまま研究を続けていくとどうなるのか?非常に期待をされたようです.

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