Wolfram,複雑系そして計算機科学へ2008年12月30日 12時01分17秒

UK-JAPAN2008のクリスマス企画で書いているイギリスの物理学者の話です.スティーブン・ウルフラム(Stephen Wolfram,1959年〜)の続きです.
1980年にわずか20歳で博士の学位を取得した後,ウルフラムはすぐにカリフォルニア工科大学で教授に就任します.当時はファインマンも在籍しており,「ここで次にノーベル物理学賞を受賞するのは彼だ.」と言わしめたといわれています.
その後も素粒子論,宇宙論で様々な研究を進めていきますが,途中で不思議な研究も行っています.1980年にComputer Algebraの講演を行っています.これはコンピューターで代数計算を行うシステムの事です.そして1981年にこのアイディアを実現したソフトウェア SMP (Symbolic Manipulation Program) を商業リリースします.
理論物理学の計算は,素粒子論,宇宙論で大変複雑なものです.私が行う研究でも,等号の後がノート1ページ以上に達する計算がしばしばあります.こういう計算を簡略化するために,ウルフラムはコンピューターを用いた計算の実用化に至ったのではないでしょうか.
この後,ウルフラムの研究対象は徐々に別分野に移っていきます.進化の計算モデルとして考えられる,セル・オートマトンについて取り組み始めます.規則は単純であるものの,その振る舞いは非常に複雑であるという複雑系と呼ばれる分野の研究です.この分野でも,23歳で「最先端の物理学をまとめあげた論文しか載らない雑誌」に研究成果を発表します.
  • Statistical Mechanics Of Cellular Automata
    Rev.Mod.Phys.55, 601, (1983)
その後ウルフラムは1983年にカリフォルニア工科大学からプリンストン高等研究所に移り,1986年にイリノイ大学に移ります.そして1986年に複雑系研究の学術センター Wolfram Research Inc. を設立します.
Mathematicaは1986年から開発を始め,1988年にバージョン1がリリースされます.2008年秋,バージョン7がリリースされ,機能がますます拡充されています.
ウルフラムはMathematicaの開発とともに複雑系研究を続けています.この成果はA New Kind of Scienceという本に2002年にまとめられています.Mathematica のマニュアルに負けず劣らずの大著です.

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