19世紀の物理学を覆う雲と Kelvin2008年12月29日 20時08分17秒

UK-JAPAN2008のクリスマス企画で書いているイギリスの物理学者の話の続きです.ケルビン(Lord Kelvin,1824〜1907年)の電磁気学,熱力学の業績を挙げてきました.
ケルビンの業績はそれだけに留まりませんでした.物理学者としてではなく技術者としても一流でした.19世紀の半ばには,遠距離の通信として電信が普及してきていました.1854年,ストークスは大西洋を横断させる海底電信ケーブルの敷設を提案し,これに関連するファアデーの実験についてトムソンに意見を求めました.そして,トムソンは現在でいうところの帯域幅問題を解決しました.1856年にトムソンは電信会社の取締役に選ばれ,紆余曲折を経て1866年に電信ケーブルの敷設に成功します.この功績でナイトに除せられます.
その後も1890年に王立協会会長に就任,1892年に男爵に叙せられます.この時,トムソンはケルビン卿となります。電磁気学,熱力学,流体力学,さらには地球物理学,通信の分野で幅広い活躍をしていましたが,晩年になって新しい物理学,科学技術が展開しようというところでは,未来の予測が難しかったようです.X線の発見に懐疑的だったり,気球や飛行機は成功しないと述べたりしていました.ただ,1900年に行った講演(The London, Edinburgh and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science, Series 6, volume 2, page 1 (1901) に収録)では,黒体輻射マイケルソン・モーレーの実験についてが説明できていないと述べています.これこそが,前者は量子力学,後者は特殊相対論の発展の重要なポイントとなっているのです.

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