イギリスの「政府への科学的助言に関する原則」2010年04月15日 22時10分04秒

昨年の事業仕分けでは,科学技術の基礎研究の予算が大幅に削られた事で,ノーベル賞受賞者や各種学会から抗議・非難の声明が相次いで出されました.ここまで政府に科学者たちが意見を出したのは珍しいのではと思います.(私も署名したものがあります)
海外ではどうでしょうか.3月24日にイギリスで政府への科学的助言に関する原則というものがビジネス・イノベーション・技能省から発表されました.助言と政策の間の関係を明確にしようというのがねらいとのことです.
私が気になったところを抜粋します.

<明確な役割および責任>
・政府は、独立科学顧問の学問の自由、専門家としての地位および専門知識を尊重し、十分に評価しなくてはならない。
・科学顧問は、自らの研究を自由に公表し、紹介することができる。
・科学顧問は、自らがどのような立場で意思疎通を行っているのか明確にしなくてはならない。

<透明性および公開性>
・政府への科学的助言は、国家安全保障や犯罪の助長など、公開を避けるべき優先的理由がある場合をのぞき、一般に公開しなくてはならない。
・政府は、独立顧問の助言について先入観を持って判断してはならず、助言が公表される前にその助言を非難もしくは拒否してはならない。
・政府は、特にその政策決定が科学的助言と相反する場合には、その決定の理由について公式に説明し、その科学的根拠を正確に示さなくてはならない。


極端な例として昨年の事業仕分けの時のやりとりを念頭に置いてみると,この原則がどのくらい重要か分かるかと思います.

イギリスの科学技術会議による報告書2010年04月15日 22時16分02秒

イギリスに関して,もう一つ面白い物がありました.
科学技術会議による報告書 「A Vision for UK Research」です.
主な提案事項は以下の通り.
  • 長期的には、政府は修士号/博士号の条件を再検討すべきである。一般に博士号の修学期間は4年間とし、最初の1~2年は、特別な技能も、広く応用可能な技能も習得できる修士課程とする可能性を考慮する。
  • 政府は、CSTが提出した英国の研究に関するビジョンを明確に示し、公共支出の引き締めが厳しい期間における継続的な投資を正当化しなくてはならない。
  • 政府は、研究の枠組みを整備しなくてはならない。研究への投資を実世界の利益へと反映させ、地球規模課題への対応に役立てなくてはならない。
海外の大学院では日本とは異なり,最初から修士で終えるコースと博士号(Ph.D)取得に至るコースが分かれていることが多いです.それを日本と同じようにしようというのが最初の話です.海外は日本の論文博士にあたる制度がありません.博士号取得は大学院に通い,論文を提出して公聴会で審査を受ける必要があります.
後の二つは政府の方針です.「基礎研究は長期的な投資である」という事が伝わってくる様な内容です.