母校を訪問2009年04月05日 20時10分38秒

昨日は母校の高校を訪問しました.といっても,3月末まで勤務していたので,「また来たの?」という感じで先生方に受け入れられました.
ホームカミングデーというイベントに参加しました.まあ,卒業生を学校が歓迎するイベントです.とはいえ,私の高校は血塗られた歴史があり,卒業生が徒党を組んで(?)学校をとんでもない事態に陥らせた事があるため,その反省からいわゆる『同窓会』が存在しません.
近年,同窓会を復活させようという動きと,過去の過ちを繰り返さないために復活に慎重な方の動きがあり,話の決着がつかないまま何年も過ぎているという状況です.
今の生徒たちの教育環境を整えるならば,同窓会が存在してOBたちから寄付を集めるのは有効な手段かもしれませんが,「金は出す分,口も出す」で変な方向に暴走してしまっては元も子もないので,慎重な訳です.
いずれにせよ,これだけメチャクチャな学校なのに,生徒たちが自分の望む道にそれなりに進めているのは,現在の日本においてある意味奇跡的な事ではないかと思います.

新年度の恒例行事?2009年04月07日 23時15分18秒

昨年度に講義を担当していた大学の教務課から,突然電話がありました.

「先生,本日の夕方の講義の件ですが,どうなさいましたか?」
「私は昨年度で辞職という事をお伝えしたはずですが…」
「あれ!?そうでしたか!?大変失礼致しました.」

どうやら,私が辞職して後任の方が担当するという事に,教員サイドでは決まっていて,手続きが進んでいたはずですが,事務方で何かうまくいっていなかったようです.
昨年度末に学長名で「今までの教育に対するご協力,ありがとうございました」というお手紙をもらったのに,不思議です.
きっと新年度で新入生の対応やカリキュラム変更等があり,大変なのでしょう.

ポスドクたちとお話2009年04月11日 22時58分16秒

昔所属していた研究室で,ポスドクたちとお話をしてきました.
学位を取り立てで,いよいよ研究に邁進しようという若手研究者の夢を聞くと,自分の昔の姿が思い出されます.そういう時に,
「先輩の今までの経緯を詳しく教えて下さい」
といわれても,他の人が容易にマネできない様な事をしてきたので,参考になるかは分かりません.しかも,超一流の研究者のように順風満帆な研究者の人生を歩んでいる訳ではないので,夢を壊す事になるかもしれないと予め注意しつつ,少し話しました.
専門分野で任期付の職を得て,その任期が切れた時の事,分野を変えてまた任期付の大学教員の職を得て,再び任期が切れた時の事.さらに分野をやや戻して,職を得た事等.
傍から見ていると,分野を変えて職を得ているのは不本意だと思われる様ですが,現実に直面するとそうも言っていられませんし,不本意でない範囲でキャリアパスを探してきたつもりです.

いずれにせよ,自分の将来の事を見据えて,意味のある研究に邁進する若者たちは後押ししようかなという気にはなります.酒を酌み交わしつつという場面でしたが,そういう所で前向きで有意義な話が出来るのは,研究室の飲み会であるという所の特徴かと思います.
あまりに活気のない研究室だと,こういう事も無く,ただダラダラと酒を飲み続け,しまいには酒に飲まれた状況で朝を迎えるという,非生産的な事も起きてしまうのではないでしょうか.そういう研究室だと,やる気の無い年配の研究者はともかく,巻き込まれる学生たちが気の毒に思います.

三峡ダム、いよいよ本格稼働2009年04月15日 22時25分03秒

長江(揚子江)中流域に建設中の三峡ダムが,いよいよ工事の最後の年です.つまり,今年完成します.
このダム,水位は175m,ダム湖の長さは約570km,総貯水量は実に393億立方メートルというとてつもないものです.発電所の年間発電量は約840億kWh.分かりやすく書くと,発電所の出力は1820万kWです.
これがどれくらい凄まじい規模かを示すために,日本の例を出します.黒部の太陽で話題になった黒部ダムの総貯水量が約2億立方メートル,黒部川第四発電所の認可出力は33万5000kwです.つまり,発電の規模でクロヨンの50倍以上,貯水量では約200倍です.
これだけの規模のダムを造って,影響は無いのでしょうか.「地球の自転が変わる」という心配がされたこともあるようです.それは,「フィギュアスケートでスピンをしている選手が腕を延ばすと回転が遅くなる」ように,地表に大量に水を溜め込むと地球の自転が遅くなるのではと思ったのでしょう.地球の質量とダムの貯水量を比較してみて,せいぜい「うるう秒を付け加える間隔が縮まるかな?」という程度です.むしろ気がかりなのは,水質の変化(汚染)や付近の地盤に与える影響です.また,100万人以上の方が移住させられ,名所旧跡が水没した事も問題ではと思います.(三国志で有名な白帝城は,辛うじて水没を免れたようです)

クロヨンよりも過酷な話2009年04月19日 19時20分57秒

黒部峡谷というとクロヨン(黒部ダム,黒部川第四発電所)やトロッコ列車の黒部峡谷鉄道などを思い浮かべるのではないかと思います.
クロヨンの工事に関しては,黒部の太陽をお読みになるとよく分かると思います.三船敏郎と石原裕次郎という二大スターの共演による映画が1968年に公開されましたが,残念ながらビデオ化されておらず,テレビでも完全版は放送されておりません.
さて,この工事による殉職者は171人にも上り,ダムの横には慰霊碑があります.如何に過酷な工事だったかを物語る様です.ところが,このクロヨンよりも過酷な工事がかつてなされていました.1936〜1940年に行われた,黒部第三発電所の工事です.こちらは何と300人以上が殉職しています.人智の想像を遥かに超える自然が前に立ちふさがり,大変な危険を伴い幾度もの工事中止命令を受けながらも,日中戦争が始まった当時の時代背景のもとに工事を押し進めて行った所に,鬼気迫るものがあります.この話は吉村昭著の高熱隧道 (新潮文庫)にまとめられております.
どのような苦難が待ち受けていたかはお読みいただければ分かるかと思います.タイトルの『高熱隧道』ですが,トンネル工事区間が温泉湧出地帯であったために,岩盤の温度が上昇し続け,100度を超える岩盤を人力とダイナマイトを用いて掘り進んだことから,こう呼ばれています.ダイナマイトは高温では自然に爆発する恐れがあり,このための事故もありました.
今はこのトンネルは,関西電力の見学ツアーに申し込むと通れる様です.コンクリートによる壁面の補強,導水管の敷設などにより,現在は40度程度まで冷却されているそうです.ここを通り抜けるときは窓の空かない特殊な専用鉄道を使います.