クロヨンよりも過酷な話2009年04月19日 19時20分57秒

黒部峡谷というとクロヨン(黒部ダム,黒部川第四発電所)やトロッコ列車の黒部峡谷鉄道などを思い浮かべるのではないかと思います.
クロヨンの工事に関しては,黒部の太陽をお読みになるとよく分かると思います.三船敏郎と石原裕次郎という二大スターの共演による映画が1968年に公開されましたが,残念ながらビデオ化されておらず,テレビでも完全版は放送されておりません.
さて,この工事による殉職者は171人にも上り,ダムの横には慰霊碑があります.如何に過酷な工事だったかを物語る様です.ところが,このクロヨンよりも過酷な工事がかつてなされていました.1936〜1940年に行われた,黒部第三発電所の工事です.こちらは何と300人以上が殉職しています.人智の想像を遥かに超える自然が前に立ちふさがり,大変な危険を伴い幾度もの工事中止命令を受けながらも,日中戦争が始まった当時の時代背景のもとに工事を押し進めて行った所に,鬼気迫るものがあります.この話は吉村昭著の高熱隧道 (新潮文庫)にまとめられております.
どのような苦難が待ち受けていたかはお読みいただければ分かるかと思います.タイトルの『高熱隧道』ですが,トンネル工事区間が温泉湧出地帯であったために,岩盤の温度が上昇し続け,100度を超える岩盤を人力とダイナマイトを用いて掘り進んだことから,こう呼ばれています.ダイナマイトは高温では自然に爆発する恐れがあり,このための事故もありました.
今はこのトンネルは,関西電力の見学ツアーに申し込むと通れる様です.コンクリートによる壁面の補強,導水管の敷設などにより,現在は40度程度まで冷却されているそうです.ここを通り抜けるときは窓の空かない特殊な専用鉄道を使います.