Anthony Leggett 氏講演会42008年05月17日 23時11分53秒

Leggett 氏の講演会の話の続きです.
なぜ,核子の個数が3個のヘリウム3で超流動が起きたのでしょうか.
超伝導現象においても,電気の流れを担う電子は,陽子や中性子と同じく,多数の粒子が一斉に同じ運動をすることは禁止されると考えられていました.ところが,これらの粒子が2個で1対(クーパーペア)を構成し,「一斉に同じ運動をすること」が可能になるということが考えられました.超伝導現象において,BCS理論と呼ばれる理論では,電子がこのような対を作る事により超伝導状態が実現できると説明しています.(ただ,BCS理論で説明できる超伝導状態の温度の上限は,液体窒素の沸点より低いです.このため,最近見つかった超伝導物質に対する説明は充分になされておりません.)
ヘリウム3も2つの原子核が対になり,多数の粒子が一斉に同じ運動をすると考えられています.ただし電子とは異なり,原子核は3つの粒子からなるために状況が複雑です.Leggett 氏はヘリウム3の2〜3mK(1000分の2〜3ケルビン)における超流動現象の理論的説明を行い,ノーベル物理学賞を受賞しました.この付近ですと,圧力をかけるとヘリウム3は液体と固体が入り交じる様になり,より複雑な状況になります,

詳細を知りたい専門家は,例えば
岩波講座 現代の物理学17 超伝導・超流動 恒藤敏彦 著
 6章 液体ヘリウム3の超流動
をご参照ください.

難しい話はこれくらいにして,次回はしめくくりとして,Leggett 氏が現代物理学に思うところ,若い研究者に向けたメッセージなどを述べたいと思います.

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