クライメイト・ゲート事件2010年04月10日 12時49分05秒

本業に忙殺されて,大変重要な話を見落としていました.
クライメイト・ゲート事件とも呼ばれる話です.昨年9月21日に,鳩山首相が国連で温室効果ガス大幅削減の話をしたと,以前に書きました.
『温室効果ガス』と呼ばれる二酸化炭素,メタン,代替フロン等の排出を規制しようというものです.地球ではこういうガスの排出が増え,それにより地球の平均気温が上がっているという警鐘は,例えばアル・ゴアの『不都合な真実』で語られていました.
さて,もしこの「温室効果ガス増加により気温が上昇している」という前提が間違っていたら,どうなのでしょうか.それがこのクライメイト・ゲート事件と呼ばれるものです.
イギリス,イーストアングリア大学 (UEA) の気象研究ユニット (Climate Research Unit) のサーバーがクラックされ,内部のメール,研究文書が流出しました.その中に,解釈に依っては地球温暖化研究の捏造を疑わせるようなものが存在するという事です.
ここでの研究は例えば,気候変動枠組条約締約国会議(COP15)でも引用される,非常に信頼性の高いものです.そこで,気候変動懐疑論者からは「温暖化の説は捏造」だと思われているのです.
現在のところ,メールをやり取りした主要人物のペンシルベニア州立大学 Michael Mann,イーストアングリア大学の所長 Phil Jonesに対する調査が一通りなされ,今のところはあからさまな捏造はなさそうという事です.現在も調査は続行しています.
文書流出の時のFoxニュース(字幕付き)です.
いずれにせよ,こういう話は鵜呑みにせず,客観的で慎重な判断が求められると思います.

独立行政法人,57の研究系を整理統合へ2010年04月10日 21時54分58秒

今日の毎日新聞の記事によると,57の研究開発系の独立行政法人のうち,重複する部門を整理・統合して国立研究開発法人」(仮称)にまとめるとの事.また,国家公務員OBの天下り先となっている管理部門を統合するという事です.
ここで挙げられた研究開発系の22法人は以下の通り.
  • 医薬基盤研究所
  • 海洋技術安全研究所
  • 科学技術振興機構 (JST)
  • 建築研究所
  • 国民生活センター
  • 国立科学博物館
  • 国立高等専門学校機構
  • 国立大学財務・経営センター
  • 国立美術館
  • 国立文化財機構
  • 酒類総合研究所
  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)
  • 水産総合研究センター
  • 水産大学校
  • 製品評価技術基盤機構
  • 日本学術振興会 (JSPS)
  • 日本学生支援機構 (JASSO)
  • 日本原子力研究開発機構 (JAEA)
  • 日本スポーツ振興センター
  • 農業・食品産業技術総合研究機構
  • 理化学研究所 (RIKEN)
  • 労働政策研究・研修機構
研究機関が東京に事務所を置く理由の一つは「国会対策」です.聞くところによると,通常国会開会中は,東京の事務所スタッフは連日残業だとか.国会の運営次第で,詳細な資料を作成したり,連絡を取り合ったりする必要があるからだそうです.宇宙,原子力,エネルギー,情報通信等の研究機関は,最先端の研究を行うと同時に,国の戦略を検討するシンクタンクの役割をも担っていると考えられるのではないでしょうか.
もし閉鎖として,それぞれの機関の本部に部署を引っ越すと,国会開会中のやり取りが大変になるのではと思います.例えば理化学研究所は埼玉県の和光なのでまだしも,JAXAは調布,NEDOは川崎,JAEAは茨城県東海村です.

前回,事業仕分けを取り仕切ったシンクタンクの構想日本のWebページを見ましたが,日本の科学技術,教育政策をどうするのかという視点が欠けているように思います.事業仕分けのページにも「いかに予算を削ったか」という実績を誇っているだけの感があります.目先の損得だけで測れないものを,同じ物差しで測るのはいかがなものでしょうか.

科学技術関連分野の新しい仕分け人2010年04月11日 16時21分06秒

事業仕分けで,民間人31名が内定しました.ほとんどが前回からの留任ですが,3名新規に加わっています.
科学技術関連分野の新しい仕分け人として,東京大学大学院総合文化研究科の黒田玲子教授が加わりました.生物化学,生物物理学が専門です.以前に研究の解説を読んだ事がありますが,確かに積極的に研究活動を行っている研究者である事は間違いありません.ただ,最先端の研究分野全般について,的確なコメントを出し続ける事が出来るかというと,これはなかなか難しいのではと思います.
前回の事業仕分けで,専門分野では確かに大変な業績をあげている研究者が,他の分野ではトンチンカンな事を言っていると見受けられる例がありました.「超一流の研究者の発言」という事で,他の仕分け人が流されてしまう恐れがあります.変な方向に話が流れていかないかどうか,注目していこうと思います.

研究開発法人は5つ程度に?2010年04月11日 20時12分00秒

本日の毎日新聞の記事から.
枝野行政刷新大臣の講演での発言との事.現在ある研究系の38の独立行政法人を5つ程度に統廃合するということらしいです.別の記事では5〜15程度とも報じられています.
さて,統合するとうまくいくのでしょうか.産業技術総合研究所という独立行政法人があります.沿革を見ますと,2001年に工業技術院のもとにあった16の研究所と,計量教習所を統合しています.昨年の事業仕分けでは
「産総研の研究業務の厳選が必要。」
などという意見が出てきました.「国立研究開発法人(仮称)」なる法人を作った先には,必要性を十分に判断せずにこういう研究プロジェクトを削減するような話が出ないかという点が気になります.

独立行政法人、拡大か?2010年04月13日 22時27分55秒

現在,オバマ大統領の呼びかけで世界47か国の首脳・代表が参加する「核安全サミット」が,ワシントンで開催されています.鳩山首相が参加していますが,中国の胡錦濤国家主席も来ております.
日本は戦争による唯一の被爆国であり,核兵器非保有国でありながら,原子力の平和利用に関する技術は非常に高いので,平和利用に関して果たす役割は非常に大きいと思います.
まず,現実認識から.現在,日本の発電量の1/3程度が原子力発電ですので,原発廃止は現実的に不可能です.また,廃止したところで原子炉の解体には非常に時間と手間がかかります.このことは,例えば日本原子力研究開発機構 (JAEA)原子炉廃止措置研究開発センターのWebページを見ればよく分かると思います.
さて,今回の「核安全サミット」,鳩山首相が昨年9月の国連演説のように,とんでもない事を約束しないか心配ではあります.新聞報道によると,JAEAに「アジア核不拡散・核セキュリティー総合支援センター(仮称)」を新設し,人材育成,ネットワーク構築に貢献するそうです.
でもちょっと待って下さい.先日のエントリーに書きました通り,JAEAは事業仕分け第2弾の対象となる独立行政法人です.事業仕分けで組織の縮小を図る一方で,組織を大きくする様な話になっていませんでしょうか.また,JAEAには既に核不拡散科学技術センター原子力人材育成センターがあります.これらの組織との関係はどうなるのでしょう.
今回のサミットでの首相の動静から目が離せないところです.