事業仕分けで当選1回の衆参議員95人が「調査員」に2010年04月02日 23時45分25秒

4月下旬から行う予定の事業仕分け第2弾で,民主党は当選1回の衆参議員95人が「調査員」にするとのことです.
前回は「鶴の一声」で当選1回の議員が全て外され,批判を浴びました.
では今回はどうでしょうか.国の方針に則って,きちんと判断を下せる議員が95人いらっしゃるのでしょうか.特に,日本をこれまで支えてきた科学技術分野に対し,それなりの見識を持った方々なのでしょうか.いわゆる「小沢チルドレン」を見ると,選挙に勝つ事が第一の目的で,あとはよく知らないという方がゴロゴロいらっしゃるような気がします.
こういうパフォーマンスを繰り返して,後年取り返しのつかない様な事をしでかさないか,注意が必要です.

事業仕分けを前に,独立行政法人が叩かれています.おそらく理事に限らず,研究員,技術員の厚遇も批判を浴びているのでしょう.そこで,研究者の端くれとして逆に批判している人たちにお聞きしたいのです.「もしその独立行政法人に研究員,技術員として雇われたら,あなたは給料に見合った仕事を成し遂げる事が出来ますか?
世の中,いろいろな職に挑戦できる機会の均等は大歓迎です.しかし,何も出来ない,さらにはやる気のない人にまで,寝食を忘れて働いている人と同じ結果の均等を求めるのは大間違いです.そういう世の中になったら,「働いている人がバカを見る」のではないでしょうか.いわゆる東側社会が衰退した理由の一つはここにあります.まさか今の政権を握っている人たちは,昔の「働かなくても食べられる」と言われた理想の東側社会を,日本に造り上げるつもりなのでしょうか.この国がどうなるか,気掛かりです.

文部科学省からの研究費について2010年04月05日 22時13分59秒

研究者は,研究費を使って研究を行います.中には自分の給料をつぎ込む人もいらっしゃいますが,それでは生活が成り立たなくなる恐れがあるので,研究助成の申請をする場合がほとんどです.
研究助成の中で,おそらく一番受けている人が多いと思われるのが,文部科学省の科学研究費補助金です.略して『科研費』と呼ばれる事がしばしばあります.10月頃に,2〜6年程度の研究計画,予算計画を記した申請書を研究者が単独あるいはグループで作成して,研究機関を通じて申請します.この申請書は,利害関係がないように選ばれた他の研究者によって審査され,4月初めから規模に依って順次採否結果が通知されます.アメリカの研究費制度に比べれば審査の時間が足りなかったり,一部の国立大学に偏りがちだったりという批判があり,不十分という意見があります.ただ,多段階の審査を経た上での結果であるので,極端な物ではないのではと思います.
文部科学省が直接扱うのは,額が大きい物です.理論系の研究者ですと,少額(それでも3〜4年で500万円以下)に分類され,日本学術振興会という独立行政法人が担当しています.ここは一つ一つの額は文部科学省の物に比べると少ないですが,採択者数が桁違いのため,総額では大変なものとなります.文部科学省と日本学術振興会の分を合わせると,科研費総額は1970億円(平成21年度)になります.採択率が30%に満たないので,採択されなかった人からの不満の声は時々聞きます.(私は5回応募して2回採択なので40%です)この予算が,日本の基礎研究の大部分を支えているのです.「国からの補助金の多い独立行政法人」ということで槍玉に挙げられる日本学術振興会ですが,補助金を削減すると日本の基礎研究が衰退します.
さて,採択の内定を受けるといろいろな書類を出す必要があります.年間の研究計画,予算執行計画です.この中に,「科学研究費補助金の使用にあたっての確認書」というものがあります.一言で言えば,研究者の誓約書です.こんな感じの文面です.


科学研究費補助金の使用にあたっての確認書
**大学学長 殿

私 ◯◯◯◯ (自署)は、平成22年度 の科学研究費補助金により研究を遂行 するにあたり、補助条件を理解しこれ を遵守いたします。また、科学研究費 補助金が、国民の貴重な税金で賄われ ていることを十分認識し、科学研究費 補助金を公正かつ効率的に使用すると ともに、研究において不正行為を行わ ないことを約束いたします。


研究費は国民の税金から賄われています.そこで,正しく効率よく使用する事を,研究費を管理する研究機関の長に誓うという形を取っています.こういう誓約の上で,研究費をありがたく使わせてもらっているのです.
「税金の無駄遣い」があちこちで指摘されています.研究者は上記の様な心を持って税金から賄われる研究費を執行しているので,少なくとも変な政治家や官僚のような無駄はしないものと思います.

24学会共同シンポジウム 科学・技術による力強い日本の構築2010年04月06日 23時25分27秒

昨年の事業仕分けの後,自然科学系の学会が連名で声明を出す等,研究者がいろいろな活動を行いました.
事業仕分け第2弾の前に,次の様なイベントがあります.

24学会共同シンポジウム 科学・技術による力強い日本の構築 (PDF)
-我が国の科学・技術の進むべき方向と必要な政策を提言する-
日時 平成22年4月28日(水)13:15-17:00
会場 東京大学理学部1号館小柴ホール

お時間のある方はどうぞ.おそらく新聞で報道されると思います.

宇宙の特殊な光から地球上の生命の起源に新知見2010年04月06日 23時28分25秒

国立天文台のリリースです.
宇宙の特殊な光から地球上の生命の起源に新知見
オリオン大星雲の中心部に位置する,星が次々と生まれる領域を観測したものです.
我々の身体を作るアミノ酸は,鏡に写すと左右が入れ替わり,元のものと重なりません.そのため,自然界でアミノ酸が勝手に合成されると,両者が半々になると思われます.ところが,片方のタイプしか地球上の生命にはありません.
この理由として今回の研究では,星が生まれるところでは「円偏光」という波の振動が偏った光があり,それによってアミノ酸のタイプが一方に偏るのだという主張をしています.
ついでに少し補足します.分子が鏡で写したようにひっくり返ると,有益な薬品が毒物に変わる事があります.それがサリドマイドです.鏡で写した両者の分子のうち,一方だけを合成する有用な方法を開発したのが,野依良治氏です.

8人の仕分け人2010年04月07日 21時53分22秒

事業仕分け第2弾で,仕分け人となる国会議員8名が発表されました.
こちらに出ています.
全議員の公式サイトにリンクを張りました.
よく見ればわかりますが,理系の大学,大学院出身者はゼロです.こういう人たちが,日本の最先端の基礎研究を担う独立行政法人の重要性,必要性ををきちんと理解し,不必要なものは削るという,至極真っ当な判断が出来るのか,大いに気掛かりです.前回の仕分けの事で蓮舫議員のスパコンに対する発言が取りざたされる事が多いですが,今回も一波乱ありそうです.
特に日本のエネルギー政策,エネルギー事情を理解していないのか,原子力関係を全否定する社民党議員が,日本原子力研究開発機構の仕分け担当になったらどうなるのか大変気になります.