文部科学省からの研究費について2010年04月05日 22時13分59秒

研究者は,研究費を使って研究を行います.中には自分の給料をつぎ込む人もいらっしゃいますが,それでは生活が成り立たなくなる恐れがあるので,研究助成の申請をする場合がほとんどです.
研究助成の中で,おそらく一番受けている人が多いと思われるのが,文部科学省の科学研究費補助金です.略して『科研費』と呼ばれる事がしばしばあります.10月頃に,2〜6年程度の研究計画,予算計画を記した申請書を研究者が単独あるいはグループで作成して,研究機関を通じて申請します.この申請書は,利害関係がないように選ばれた他の研究者によって審査され,4月初めから規模に依って順次採否結果が通知されます.アメリカの研究費制度に比べれば審査の時間が足りなかったり,一部の国立大学に偏りがちだったりという批判があり,不十分という意見があります.ただ,多段階の審査を経た上での結果であるので,極端な物ではないのではと思います.
文部科学省が直接扱うのは,額が大きい物です.理論系の研究者ですと,少額(それでも3〜4年で500万円以下)に分類され,日本学術振興会という独立行政法人が担当しています.ここは一つ一つの額は文部科学省の物に比べると少ないですが,採択者数が桁違いのため,総額では大変なものとなります.文部科学省と日本学術振興会の分を合わせると,科研費総額は1970億円(平成21年度)になります.採択率が30%に満たないので,採択されなかった人からの不満の声は時々聞きます.(私は5回応募して2回採択なので40%です)この予算が,日本の基礎研究の大部分を支えているのです.「国からの補助金の多い独立行政法人」ということで槍玉に挙げられる日本学術振興会ですが,補助金を削減すると日本の基礎研究が衰退します.
さて,採択の内定を受けるといろいろな書類を出す必要があります.年間の研究計画,予算執行計画です.この中に,「科学研究費補助金の使用にあたっての確認書」というものがあります.一言で言えば,研究者の誓約書です.こんな感じの文面です.


科学研究費補助金の使用にあたっての確認書
**大学学長 殿

私 ◯◯◯◯ (自署)は、平成22年度 の科学研究費補助金により研究を遂行 するにあたり、補助条件を理解しこれ を遵守いたします。また、科学研究費 補助金が、国民の貴重な税金で賄われ ていることを十分認識し、科学研究費 補助金を公正かつ効率的に使用すると ともに、研究において不正行為を行わ ないことを約束いたします。


研究費は国民の税金から賄われています.そこで,正しく効率よく使用する事を,研究費を管理する研究機関の長に誓うという形を取っています.こういう誓約の上で,研究費をありがたく使わせてもらっているのです.
「税金の無駄遣い」があちこちで指摘されています.研究者は上記の様な心を持って税金から賄われる研究費を執行しているので,少なくとも変な政治家や官僚のような無駄はしないものと思います.

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