補正予算見直しで2009年09月23日 20時14分58秒

文部科学省の補正予算見直しで,いろいろな事が起きています.
さすがに「アニメの殿堂」撤回はいいと思いますが,これは官僚の提案に漏れていたものを大臣が指摘したという事です.
それでは,官僚の提案に入っていたものは一体何だったのでしょうか.この辺です.
  • 学校への地上波デジタルテレビ、電子黒板、パソコンの普及のための予算(860億円)
  • 学校の耐震化・太陽光発電パネル設置などのエコ改修事業(240億円)
  • 研究者海外派遣基金(224億円)
  • 地域産学官共同研究拠点整備事業(145億円)
  • 無人探査機の建造と支援母船の改造費など(43億円)
  • 学校の理科設備費(43億円)
太字のところに言及します.
研究者海外派遣基金以前のエントリーで書きました.「優秀な若手は,海外で暫く(3ヶ月以上)国費で武者修行させよう」というものです.こういう話をすると,「湯川,朝永,益川の研究成果は国内の研究のみで行ったではないか!」という反論があるかもしれません.私の反論は,「研究,それから教育以外の様々な雑事から,若手研究者を解放させる事が重要である」という事です.独立行政法人化以降,大学は様々な制度改革,交付金削減による新たな補助金の確保など,様々な事に忙殺されています.そういう事に,新進気鋭の研究者を巻き込んで,いい研究が出来ないのはいかがなものかと思う訳です.私の体験からして,理数系で若いうちに助手に着任してしまうと,計算能力が高いのに研究の時間が取れないために,目覚ましい成果を挙げる事が難しくなるのではと思います.諸事情で研究に専念できる職に移り,それを実感しております.この予算を潰す事は,ごく一部の大学を除いて,若手教員に研究の機会を奪う事になるのではと思います.

後者は,平成20年度中学校理科教師実態調査を見ると,学校の理科の先生が如何に四苦八苦しているかが分かるかと思います.教材費の面でも大変です.
  • 生徒一人当りの設備備品費(年間):平均453円
  • 生徒一人当りの消耗品費(年間):平均341円
上記の金額は月額ではありません.この少ない予算で,如何にして理科教育を成り立たせるかを考えると,苦労がしのばれます.こんな状況で技術立国として日本が今後やっていけるのか,大変不安になります.環境問題,エネルギー問題が注目されていますが,それを解決するには大勢の技術者が必要です.せっかく中等教育での理科教育が改善される機会なのに,何をしてくれたんだという気分になります.