訃報を受けて2009年09月03日 06時40分30秒

先ほど,世話になった先生の訃報を受けました.まだ50歳ちょっとなのに,急な連絡で動揺しております.
この先生との関わりについて,思いを巡らすと今日の仕事が手につかなくなるので,その話は後で整理する事にします.

I先生のこと2009年09月03日 22時04分37秒

仕事が終わって帰宅したので,少し頭を整理してみました.だいぶ個人的な話が入っておりますがご容赦ください.今日は推敲できるほど頭が回っておりません.



私が先生を存じ上げたのは,おそらく中学生の頃だと思います.地学の授業は当時,クラスによって先生が異なり,私は別の先生に教わっておりました.当時も体調を崩されていらっしゃったと思います.

先生の授業を受ける機会がないまま,中高一貫の学校を卒業しました.高校生の頃には宇宙に興味がありましたが,それは物理の対象としてだったので,授業は物理/化学を選択しました.普通の理工系の生徒の選ぶコースです.当時の物理の先生を「全くお前って奴は....」と嘆かせていた事を思い出します.
幸いにも希望通り大学は物理学科に入る事が出来,卒業研究から宇宙物理(理論)の研究に従事.そのまま大学院に進学して博士の学位を取得しました.その後は『高学歴ワーキングプア』という言葉がありますように,任期付の研究職を転々としました.

2008年初夏,前年度の契約が切れて非常勤のわずかな職を得ているだけとなっておりました.将来の職の確保の見通しが立たず,「このまま研究者として,朽ち果てていくのだろうか...」と落ち込みがちになっていました.そんなある日,先生が教壇を離れ暫く療養されるために,代用講師を探しているという話を伺いました.「母校の力になれるのならば,ここでひとはだ脱ぐべきかな」という思いや,単純に仕事を探していたという事などから,応募して担当する事となりました.
入院直前に先生と引き継ぎの話をしましたが,先生があっけらかんとしており,大変深刻な事態であるとは分かりませんでした.事実を知ったのは,着任した翌月でした.先生のやりかけの授業を引き継ぎ,自分なりに出来るだけの事をやったつもりですが,先生が行おうとされた事を引き継げたかは自信がありません.とにかく授業に穴を開けてはならない,生徒の知的好奇心は十分に満たさなければならない,その想いだけで進めていたように思います.
授業期間中,先生は学校の事を心配して下さいました.先生が入院された事で,先生の教育が行き渡らず,担任クラスの授業が無事に行えなくなっていないだろうかということ,そしてもし問題のある生徒がいたら周りの先生に相談してほしいという心配りまでして下さいました.

どうにか年度の授業を終える見通しがたったころ,私は次年度(2009年度)の研究職の内定を受けました.大学よりも遥かに鋭い質問を浴びせかけてくる生徒たちに囲まれ,非常に楽しく授業を行ってきたので残念ではありましたが,講師を辞職する事となりました.最後に学年末試験を終えて先生に就職の事をご連絡したところ,今後の仕事を後押しするお言葉を下さいました.2008年度は先生をはじめとする多くの方々に励まし支えられ,ボロボロになっていた研究への志を取り戻したように思います.

2009年度に入り,私は分野を変えた研究職に就いたため,仕事についていくのが精一杯で,高校にあまり関われなくなりました.先生がもう一年休職されると伺い,またごく一部の生徒が私の授業に興味を持ってくれたので,また高校との関わりを続けていきたいと思っておりました.要望があり,高校生向けにまとめた特殊相対論のノートを理科の先生に渡した事をご連絡したところ,先生も興味を持って下さいました.5月に一度学校に来られたとの事ですが,行き違いになり会う事が出来なかったのが非常に残念です.
そして夏休みも明けようという9月3日早朝.高校のWebページを拝見し,先生が亡くなられた事を知りました.あまりの驚きに,暫くはショックで頭の整理がつきませんでした.体調が回復し退院されたところで,特殊相対論のノートをお見せしてご意見を伺えたらと思っていたのです.今改めて先生からの数々のメールを拝見し,生徒たちに対して慈悲深い心をお持ちであり,先生方への心遣いも丁寧なものであると感じました.

今にして思う事は,私は先生の代用講師であり,ただ知識を伝えるだけの者であったという事です.知識の伝授以外の面を考えますと,私は先生に遥かに及ばないと思います.教育者としてではなく研究者として,先生の励ましのお言葉を肝に命じ,今後の日々を過ごしていきたいと思います.また微力ながら,高校の発展に寄与していければと思っております.安らかにお眠りください.

下記の補足2009年09月04日 18時25分14秒

今頃、先生のお通夜が営まれているころと思います。
しかし私は別件の法事のために参列できません。
大変申し訳なく思います。
こんな感じでかかわりの深い方の法事を欠席したのは2度目です。
(一度目はコンピューターの師匠の時で、海外出張中でした)
おそらく先生の教え子(つまり私が代講で担当した生徒)が数多く参列しているのではないかと思います。
彼らに期待することは「悔いのない人生を送ってほしい」ということだけです。生活指導できるほど偉くはないので、これくらいしか言えません。

もうひとつありました。追悼の記事、宿題などにパクらないでくださいね。まあ、生徒たちはこのブログの存在を知らないでしょうから、見つからないかもしれませんけど。

日食観察による目の障害等発生に関する調査について2009年09月05日 18時49分53秒

天文学会MLから,7月22日の日食に関して以下の調査依頼が来ました.
何かございましたら,下記の連絡先にご連絡ください.


     日食観察による目の障害等発生に関する調査について

    天文教育普及研究会 世界天文年プロジェクト ワーキンググループ
                 世界天文年2009日本委員会 企画委員会

■調査の趣旨
 私たちは、今年7月22日の日食が安全に観察されることを願い、世界天文年
日本委員会推奨日食グラス(ビクセン製)はじめ複数の日食観察用メガネにつ
いて、可視域及び赤外域の光線透過率を測定しその安全性を検証してきました。
また、日食観察に利用される可能性のある各種代用品についても同様の測定を
してきました。その結果は、天文教育普及研究会のウェブサイトで公開してい
るとおりです。
 さて私たちは、2012年の金環日食をはじめとする今後の日食において、さら
に安全・安心に観察をしていただくため、今回の日食における観察後の目への
障害の事例について調査することとしました。これまで、日食観察後の目への
障害についての事例を集めた報告はわずかで、特に国内においてはそのような
報告はほとんどありません。そのため、どのような観察によってどのような障
害が発生したのかという点について、具体的なデータがほとんどない状態にあ
ります。
 今回、お寄せいただきました事例については、十分に精査したうえで、今後
の情報提供に役立てていきたいと思います。もちろん、いただいた情報の目的
外使用はいたしませんが、事例の内容等につきましては、個人や団体を特定で
きる情報を除いて、天文教育普及研究会のウェブページ等で公開させていただ
くことになりますので、あらかじめご了承ください。
 どうか趣旨をご理解の上、ご協力くださいますよう、お願い申し上げます。

■調査の対象となる方
 7月22日の日食観察に伴う目などへの障害発生についての調査です。次の項
目にあてはまる方は、この調査へのご協力をお願いします。 なお、特に異常を
感じなかった方は、あるいはそのような事例を発見できなかった場合は、ご回
答いただく必要はありません。
・ご自身、あるいは身近な方で、日食観察によって目やその他身体の異常が起
 こった、または日食観察が原因と思われる障害が発生したと思われる方。
・学校の先生方のうち、児童・生徒に対する聞き取り調査等を行い、日食観察
 が原因と思われる目や身体の異常、ならびに関連する障害の事例を発見した
 とき。
  ※対象となる児童・生徒について個々に回答してください。
・日食観察から数日たった後に目や身体の異常、ならびに関連する障害を発見
 し、その原因が日食観察である可能性を否定できない場合。
・日食観察イベントの開催者(施設職員、ボランティア団体等を含む)の方で、
 同観察イベントの参加者の中に、日食観察が原因と思われる目や身体の異常
 ならびに関連する障害の事例を発見したとき。
   ※対象となる参加者について個々に回答してください。

■回答の方法
・回答は,次のウェブページにアクセスしていただき,所定のフォームに書き
 込んでください.
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 「日食観察による目への障害発生事例の調査」のウェブページ
  http://www.tenkyo.net/iya/eclipse/eclipse_index.html
 ---------------------------------------------------------

■回答の期限
    2009年9月20日(木)
 ※この時点で集計しますが,これ以降もしばらくは回答を受け付けます.

■お問い合わせ先
 この調査に関するお問い合わせ等は,次のアドレスまでメールにてお願いい
たします.(<at>を「@」に修正してください.)
  ---------------------------------
   se-enq<at>astronomy2009.jp
  ---------------------------------

久しぶりに高校を訪問2009年09月13日 21時10分47秒

先週末はI先生の件で高校へ.I先生が使っていた机を私が借りて使わせてもらっていて,今は私の後任の講師の方が使っていらっしゃいました.
他の理科の先生方と,I先生の思い出や現在の自分の状況,教育環境などについていろいろな話をしてきました.『自由闊達』を校訓としている学校なのですが,最近は自主的に有意義な問題に取り組もうという積極的な生徒が減っているということが気がかりでした.その逆に,自由をはき違えて自分では落とし前をつけられないことをやらかす生徒が増えているということを聞き,さらに気がかりになりました.結局のところ,放ったらかしにしておくと怠けてしまう生徒が増えてしまったということでしょうか.
最終的に,何かいいものを見つけて,それに真剣に取り組んでくれればいうことはありません.I先生の教え子(私が臨時に受け持った教え子でもある)が,最終的に幸せな進路を見つけて進んでくれれば言うことはありません.面白そうだけどつまらないことに関わって,無駄な時間を過ごし,人生を棒に振る様なことだけは避けてもらいたいということが,私の願いです.
(今回も,生徒が見ていないという前提で,好き放題書いています)