Nature に科学技術予算の「事業仕分け」記事掲載2010年02月04日 19時36分58秒

科学雑誌のNatureNature Digestに,「事業仕分け」で科学技術予算が削減された件に関する記事が掲載されました.
著者は日本人ではありません.残念ながら,購読者でないと記事本文を読む事が出来ないようです.

理研でスパコンのシンポジウム2010年02月14日 20時33分44秒

次世代スーパーコンピューターで揺れる理化学研究所ですが,3月24日に以下の様なシンポジウムが開催されます.

理研におけるスーパーコンピュータの最新動向とHPCにおけるシステム性能評価の今後(理研シンポジウム 2009)

次世代スーパーコンピューターは事業仕分けでやり玉に挙げられ,それに対する反論も凄まじいものがありました.長崎大学の濱田さんたちが2009年のSC09でGordon-Bell賞(価格性能比部門)を受賞しました.彼らの計算機は4000万円弱の制作費ながら,次世代スーパーコンピューターの1/100程度の実効性能を出しました.これを応用すればという意見も見られましたが,この計算機に得意な問題は限られており,一般的な問題にはスピードが出ないか,大変な工夫が必要です.濱田さんたちはアルゴリズムに対する工夫の成果により,十分な性能を発揮できたのです.
計算能力だけでなく,メモリやハードディスクの量も問題です.メモリを分散させると通信のために処理速度が落ちる様な問題もあります.このため分野によっては,スーパーコンピューターが必要なのです.次世代スーパーコンピューターは,何でもかんでもこなせるというところを目指すのではなく,「この辺りの分野では他の計算機では代替手段になり得ない」といういくつかのポイントを押さえる事を目指していれば,もう少し計画がすっきりしたかもしれません.

あと10日で国立大の入試2010年02月15日 22時57分34秒

あと10日で国立大の入試です.私立大の入試はそろそろ主だったところが終わる頃でしょう.明日から早稲田の入試が始まります.
昨年度は高校に行って教壇に立ち,授業を持ちました.今年度はたまに顔を出して学校の様子を聞くだけです.受け持った学年は,来年度が受験の年です.
先日,部屋の整理をしていたら高校生の時の成績表が一式出てきました.あらためて見てみると,「私立大の理系に進むべき人」というような成績でした.数学,理科はまあまあなのですが,他がちょっと...という感じです.(特に語学が)
大学,大学院で海外の文献に目を通したり,執筆したり,外国人と議論をしたりする機会が多々あったので,当時よりはだいぶ改善されているとは思いますが,入試を受けたらダメでしょう.歴史はそれなりに学んではいますが,「***があったのは何年?」という聞かれ方をすると厳しいです.そもそも高校の授業が,「年号を覚えるよりも前後関係,横の関係を知る事が重要だ」という方針だったのです.(「黒船来航は南北戦争の前」とかですね)
受験を前にハラハラしている高校生,浪人生がいらっしゃると思います.母校に戻って,「自分の成績はこんなだったんだよ」と成績表を生徒に見せたら,少しは自信を持ってくれるでしょうか.「こんな成績でも,物理学者になれるんだよ」と.
ただ,大学に入って生活態度を若干改めたということはいうまでもありません.高校があまりにメチャクチャで非常識な校風でして…

歴史上の学者の仲間入り?2010年02月21日 17時42分13秒

ここ2週間ほど,以前の研究の論文でゴタゴタが起きていました.歴史上の学者に並ぶ事があったわけです.ここで,歴史に名を残す若くして亡くなった2人の数学者を挙げます.

アーベル(Niels Henrik Abel,1802-1829)
ノルウェーの数学者.
一般の5次方程式を代数的に解く事が不可能である事を証明.(1824)
楕円関数に関する研究,群論に関する多大な研究業績を挙げる.
ところが彼の研究はガウスからは不快感を示され,コーシー(Cauchy)は彼の論文を放置.
27歳で(婚約者に看取られながら)肺結核で死去.
翌年の1830年に,フランス学士院数学部門大賞を受賞.
2001年に彼の名を冠した数学の賞,アーベル賞(賞金約1億円)制定.

ガロア(Evariste Galois, 1811-1832)
フランスの数学者.
5次以上の方程式は一般に,代数的に解く事が不可能である事を証明.(1824)
体論や群論の先見的な研究を行う.
17歳にして素数次方程式を代数的に解く方法を発見したが,その論文は提出後,コーシーが紛失.論文再提出を求められたが,今度は論文を預かったフーリエ(Fourier)が急死し紛失.
20歳で決闘の傷がもとで腹膜炎を起こし死去.


彼らと私の共通点は,提出した論文が紛失されたという点です.もっとも,彼らの論文は100年後の数学を指し示す,大変な注目を浴びる様な大論文です.私の方は,せいぜいここ30年ほどの研究を取りまとめ,私なりの知見や今後の方針をいくつか示しただけです.(それでも50ページくらいあります)
私の方は論文執筆を依頼された訳で,電子投稿をしたのですが,編集部がどこかへやってしまったそうです.出版物の目次から漏れているので問い合わせたところ,大慌てで再送の連絡が来ました.送ったらすぐに目次に加えてもらえましたが,ヒヤヒヤものでした.
出版されなければ公開しない予定だったので,業界の進歩がほんのちょっと遅れていたかも知れません.論文は近日中にpreprintで公開予定です.

若き数学者の話は,以下の本がおすすめです.

明日は国公立大学の2次試験2010年02月24日 19時25分22秒

明日は国公立大学の2次試験が予定されています.
目標を持って受験される方達の,希望が叶う事をお祈りします.

経験者からすると,「とりあえず,それなりの大学に入れば勝ち」です.研究者を目指す人ならば,仮面浪人はあまり意味がありません.むしろ大学院に進む時に他所に移ればいいのです.
大学院の入試については,たいていの人が信じないのですが,私の周辺では(分野にも依りますが)「早大,東工大の滑り止めが東大」という状況です.どういう事かといいますと,東大は大学院重点化の最大拠点です.このため,学部よりも大学院の方が圧倒的に定員の多い分野があります.そうなりますと,自前の卒業生だけでは定員が埋まらず,日本中,場合によっては海外からの学生を集めます.このため,「この人が東大の大学院に行くの!?」という事例もいくらか発生しています.
私の感覚からすると,研究者を目指す人は
  • とりあえず,それなりの学問の研鑽が出来る大学に合格すれば,文句は言わない.
  • 自分の大学でやりたい研究が出来なければ,大学院で移る.
  • 大学院生になったら,積極的にいろいろな大学の研究室に顔を出す.
  • 意欲的な学生は,大学院で海外に移る.(奨学金で学費&生活費が賄えるから)
日本の奨学金は「教育ローン」ですから,意欲的な学生は最後の事をよく考えてみるといいかと思います.