物理学者から見た原子力利用とエネルギー問題2011年05月03日 18時02分12秒

日本物理学会が6月10日に以下の様なシンポジウムを開催します.

物理学者から見た原子力利用とエネルギー問題

  • 日時:平成23年6月10日 13:00−18:00
  • 場所:立教大学池袋キャンパス 太刀川記念館3階多目的ホ-ル(150 名収容可能)
  • 対象:物理学会会員

申込については特に書いていません.先着順のようです.

今回の事故,最初の情報提供が不徹底だった事,政治家の会見が「直ちに健康に害を及ぼすものではない」というような不適切だった事も原因で,政府や専門家の発表よりも情報源の不確かな情報を信じる方々が一部に居るようです.あまりにも非論理的でめちゃくちゃな事を発言している人にはうんざりです.有用な情報を検索エンジンで探そうとしても,ノイズが多すぎて困っています.
改めて文系,理系を問わない科学教育論理的思考の重要性を痛感致しました.「子どもの学力低下」がよく問題になりますが,「大人の科学技術に対する知識の欠如」も相当なものだと思います.

情報伝達は冷静に判断してから2011年05月05日 22時48分19秒

先ほど,とあるブログでとんでもない情報を見つけました.
どこかのメーリングリストからの転載らしいのですが,福島第一原発から約30km南のところにいた少年が,急性放射線障害で亡くなったという情報です.
この情報は科学的に考えて,かなり疑わしい点がいくつもあります.約30km南で死者が出たとすると,飯館村ではもっと深刻な被害が発生している事でしょう.現地の作業員ならばなおさらです.
明らかにデマです.情報源が「友人の友人」だったり,病院が特定されなかったり,重要なポイントが全て曖昧です.
震災以降,情報が氾濫しています.情報に振り回されず,真偽を見極めて判断する能力が必須になっていると言えるでしょう(ただ,これは急ごしらえでは難しいと思います).
その前に注意しなければいけないのは,真偽不明の情報を拡散した時点で,拡散した人もデマ発信の片棒を担ぐ事になるという事です.内容次第では,違法行為にもなり得ます.十分にご注意ください.

これからを担う人たちに2011年05月08日 22時44分26秒

震災から約2ヶ月.世の中がいろいろと動いています.
私がかつて勤務していた大学は,そろそろ授業開始となるようです.教育現場から離れているので関与する事はありませんが,これからを担う人たちに昔の文献から一節を引用して伝えようと思います.

文献は福沢諭吉の学問のすゝめです.
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。で始まる文章,ここを現代語訳すると人間は本来みんな平等であるということです.これを読むと,「社会に格差があるのはけしからん!」と思う方がいらっしゃるでしょう.それでは,2段落目の最後の文を引用します.

ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。

つまり「学問に励んでいろいろな事を知る人は出世し裕福になり,学ばない人は出世もせず貧しくなる」という事です.

私なりに解釈すると,「学ぶ機会がありそれを活かして行く人は幸せな将来が開けていくが,機会がありながら学ばなかった人はおちぶれていく」という事でしょう.研究生活を送っていると,よく分かります.積極的に研究に励み,偉業を成し遂げて30代半ばで教授に就任しプロジェクトを引っ張っている人の一方で,研究よりも飲み会が大好きで,業界から消えて行った人を見ています.
大事なのは「結果の平等」ではなく「機会の平等」です.もし学べるチャンスがあったら,つまらない事にとらわれずに大いに好奇心を持って学んで下さい.「何故だろう?もっと調べてみよう.」を繰り返していけば,幅広い知識を得る事が出来るでしょう.今はインターネットを活用して,様々な情報に接する事が容易になっているのですから.
ただし,「情報の真偽を見極める能力」も必要になってくるので,その点も注意して下さい.震災以降,明らかに非論理的,非科学的な情報に触れて騒ぎ,むやみに拡散する場面もいくつか見ています.「あの有名な**さんが言ったから」信じるのではなく,自分で「何故だろうか?」と疑問を持って考える事も重要です.考えるためには前提となる知識が必要なので,知識と判断能力は互いに絡み合っているといえるでしょう.

何だか変なメールが来た2011年05月23日 20時52分51秒

震災以降,怪しい情報がインターネット上に溢れかえって,それなりに信頼できそうな情報を検索するのにノイズとなって困っています.

今日は,怪しいメールが来ました.

  • 差出人:被曝状況報告
  • 件名:(速報です!)被爆に関する情報共有2号
だそうです.先日ネタになった,「NHKのチェルノブイリ原発に関する番組がオンデマンドから消えた」という話があります.実はもともとオンデマンドに登録していなかったという落ちで,ろくに確認しなかった人がTwitterで騒いだというのが真相です.
メールでは,この番組を勝手にYouTubeにアップロードしてあるのをまず紹介しています.しかもご丁寧に
日本国政府による言論弾圧の為削除される確率の高い無料動画サイト
だそうです.著作権侵害だから削除されるが正しいのに,事実誤認が甚だしいです.それで,今頃になって水道水が危険だと騒いでいます.(事故後の大量放出からヨウ素131の半減期の何倍経っているでしょうか???)
それで,水道水を安全に飲むために家庭で蒸留するのだそうです.揮発性の高い化合物だったり,沸騰が激しくて一緒に放出されたら効果がないんですけどね....

ここ,一応は自然科学の専門家を相手に商売しているところらしいのですけど,単に商売をしているだけで科学知識や社会常識に乏しいのかも知れません.