研究,教育予算の仕分けについて少々2009年11月28日 09時12分46秒

「事業仕分け」で「科学技術関連予算削減」が挙げられ,話題となっております.
私は次世代計算機よりも若手研究者育成の予算が削られた事の方が,より問題は深いと思います.昨年のノーベル賞の受賞対象となった研究を見ると,20〜30代の研究が対象となっている訳です.年代でいえば大学院生〜ポスドク,助教あたりのところです.この年代の研究者は独立した研究者としてやっていけるかどうかというところです.分野によっては,大きな研究室で研究の手伝いの様な状況になっている場合もあります.こういう若手研究者に,研究費を給付して独立した研究をさせることは,独創的で発想豊かな研究を育むこととなります.若手の研究費は例えば科学研究費補助金の若手研究を見れば分かりますように,2〜4年で500万円以下です.(若手研究(A)は滅多に採用されないので(B)の方を挙げました).しかも,申請の満額はまず出ません.経験からして7〜8割です.こういう規模の研究費を多くの若手研究者に配分することで,その中からわずかであっても大きな成果があがると考えられます.
ビッグサイエンス1つに巨額の予算を充てるよりも,こういう小さな研究を育んで行くことが,これからの日本では大事ではないでしょうか.ビッグサイエンスについては,私は天文学に近いところにいたこともありますが,すばる望遠鏡(建設費400億円)が素晴らしい望遠鏡だからといって,その後継となる次世代30m望遠鏡(予算数千億円?)に賛成かというと,すんなり手を挙げられません.その望遠鏡によってもたらされる成果,波及効果と,その予算を多くの(もちろんある程度以上の能力を持った)若手の研究支援に回したことによる効果のどちらが大きいかを考える必要があります.ただ「この研究は面白いから予算を下さい」だけではなく,もっと説得力のある説明がこれからは必要でしょう.
教育関連では大学の運営費交付金の若干の削減,義務教育費の負担が不透明になったこと,理科支援員廃止など,非常に気掛かりです.また,日本科学未来館についてもケチがつきました.先端研究以前に,国民の小学校,あるいはそれ以前から科学技術に触れる機会を減らし,科学教育をおそろかにしようというのが,今回の仕分けの成果なのでしょうか.仕分けの議事録を見ると,科学技術,教育,あるいは防衛関係で,前提となる国の方針や,科学技術の基礎知識が欠けている仕分け人がいらっしゃるようです.「仕分け人が標準的な国民の代表である」とするならば,「日本人はここまでレベルが落ちた」という事を示しているのではないかと思います.この議事録,大学で困った学生が提出したレポートに書いてある言い分と似ていると若干感じました.

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