理数系の先生がいなくなる?2009年10月25日 21時01分53秒

今日の参議院議員補欠選挙は,2選挙区とも民主党の候補に当確が出ています.
民主党の今の有り様を支持される方が未だ多いという事でしょうか.
政策に対する賛否両論が渦巻いていますが,私が「これはとんでもない!」と思うものを挙げます.ニュース記事ですと更新されて消えてしまうので,ニュースを取り上げた塾のページにリンクします.

教員免許更新制の廃止と教員養成課程6年制化 それぞれのメリットとデメリット

現在,高等学校までの教育に携わる教員には,教員免許が必要です.制度改革により,10年に一度,教員免許の更新が必要になりましたが,民主党は方針を変える様です.上記のニュースのポイントをかいつまんで取り上げます.
  • 教員免許の更新制廃止
  • 教員養成課程を4年から6年に(大学院修士修了相当に)
  • 教育実習を2週間〜4週間から1年
1番目のものは多忙な現場の先生,更新講習を実施する大学ともに救われるのでいいのではないでしょうか.もっとも,公式が形式的ではないかという見方があり,これで能力不足の先生の排除につながるものではなかったと思います.
とんでもないものは下の二つです.二番目は法科大学院のように教職大学院を作ろうというものとも考えられます.もともと理工系の学生は,修士課程まで進んで技術を身につけて就職する傾向が強まっているので,大学・大学院に合計6年間通う事に抵抗は少ないでしょう.一方,文系の方は,修了したからといって必ず教員になれるわけでもないのに,わざわざ2年間の時間を費やして通うでしょうかというところが気になります.文科省が修了者を優遇して採用し,中等教育などに携わるようにさせるというならば別でしょう.
三番目はいろいろな意味でとんでもないです.文章にすると長くなるので,分けて書きます.
  1. 理工系学部の学生が,例えば卒論,修論の現場を離れて1年間,教育実習に専念する時間的余裕はありません.例えば修士課程を修了して就職しようという学生は,6年で学部・修士課程を終えようとすると,教育実習で1年間,就職活動で数ヶ月を取られ,修士課程でじっくり行うべき研究が全く出来ません.
    そうすると,今まで高校の理数系科目を支えてきた理工系学部の出身の先生が,ほとんど居なくなるのではと思います.
  2. 受け入れる側の学校は,1年間の教育実習を受け持つ事により,大変な負担増です.ある学年の科目を1年間,実習生に受け持たせる訳です.これでまともな授業を実施する事が出来るでしょうか.保護者からは「実習生に教わるために授業料を払っているのではない!」と抗議が来る可能性もあります.この講義に対処し補習を現職の先生方がするとなると,やはり大変な負担増です.
  3. そこまで苦労して教員免許を取得しても,免許があれば一応開業は出来る医師や弁護士とは違い,教員になるには採用試験を受けなければなりません.免許を取ったところで通る保証は全くありません.
この改革,一体誰が得をするのでしょうか.教員志望の学生,実習生を受け入れる学校の先生,実習生の授業を受けさせられる生徒は損です.得をするのは,学生減で困っている(特に教育系単科の)大学,定年間近で学校にしがみつきたい先生あたりでしょうか.どうも既得権益を手放したくない団体の陰がちらつく様な感じがします.