ノーベル賞の論文2008年10月10日 11時47分51秒

小林,益川両氏のノーベル賞の受賞対象となった論文は
CP-Violation in the Renormalizable Theory of Weak Interaction
です.大学の図書館が購読契約を結んでいれば,その大学ではダウンロードできます.

この雑誌,略称は Prog.Theor.Phys. ですが,正式名は Progress of Theoretical Physics です.何か変な気もしますが,湯川博士命名なので今更変更できないようです.(意味的には下線部は in でしょう).
物理学者が研究成果を挙げた場合,英語の論文を作成します.その論文は上記のような論文誌に投稿し,匿名の査読者(1名または複数)によって査読されます.結果として掲載にふさわしければそのまま載り,若干の変更,疑問点がある場合(これが一番多い)には著者に質問と訂正の返事を送り,明らかにダメな場合は拒否されます.この方法は,世界中のどの雑誌でもまともな雑誌ならば同じです.
さて,私は上記の Prog.Theor.Phys. で出版された論文がありません.「日本の理論物理学の雑誌なのに何故?」と思われるでしょうが,いくつか理由があります.大きな理由は「投稿料がかかる」というところです.論文誌に論文を出す場合は,原稿を雑誌に執筆する場合とは異なり,著者がお金を支払います.購読料と著者からの投稿料より,雑誌の出版が支えられているのです.
しかし,アメリカ物理学会のPhysical Reviewや,イギリスの王立物理学会のJournal of Cosmology and Astroparticle Physicsは投稿料が無料です.購読料などの他の予算で支えているのでしょう.投稿料が無料で,しかも世界中の物理学者が購読している雑誌ならば,ますますいい論文が投稿される様になり,その雑誌の権威が高まります.この循環により,いい雑誌はますますいい論文が集まる様になります.
ところがProg.Theor.Phys.はおおざっぱに計算すると,投稿料が1ページ3000円かかります.小林-益川論文は6ページですが,私の論文はこれより長い事が多いです.しかも書式の違いにより他の雑誌に比べて1ページの字数が少ないので,ページ数が多くなってしまいます.活発に研究すると,投稿料がおそろしい事になります.
こういう理由でまだ私には,Prog.Theor.Phys.から出版された論文がありません.でも日本の理論物理学を支える事を考えたら,出した方がいいのかもしれませんね.